interview05

鉄筋工事 / 鈴木 正典さん
人とのつながりの大切さを教えてくれるこの仕事が好きです。
鉄筋工事 / 鈴木 正典さん
仕事の内容について教えてください。
鉄筋工事という職種の仕事です。鉄筋は最終的にコンクリートの中に入ってしまうので、一般的にはあまり知られていませんが、建物の骨となる躯体の中でも重要な部材です。コンクリート内で適切な配置となるように、異形棒鋼と呼ばれる節のついた鉄の棒を工場で切断したり折り曲げたりして加工を行い、それを建設現場に持ち込んで現地で組立を行うのが我々の仕事です。
もちろんとても重い鉄の材料を扱うので、非常に体力が必要とされる仕事ですね。
現在、私は職長(リーダー)なので、作業所に来る職人さんを動かすこと、そして仕事の流れを把握してそれぞれの役割を指示する立場です。預かっている職人さん達をどのように指導し、どこに配置するのかを考え、その日の施工の要領を職人さんに伝えることが職長の役目といえます。
職人さんの配置というのは、それぞれ職人毎に役割を決めてその人の適正にあったところで働いてもらうことが重要になります。具体的には、鉄筋をその場所へ配る人、実際に組み立てを行う人、最後のまとめ(結束)を行う人と、大きく分けて3つの役割があります。最初から最後まで個人で施工しても良いのですが、やはりそれぞれ得意不得意があるため、ちゃんと役割を分けた方が施工をより効率的に行うことができるのです。
鉄筋工事は、一日あたり職人さん一人でどれくらい組むことができるかというと、部位(基礎・柱・壁・床)によってバラつきがあるものの、平均して400~600㎏の重量の鉄筋を組み立てることになります。場合によっては一日で一人当たり5~6t組むこともあります。
体力的には非常に大変な仕事ではありますが、その分やりがいもあります。
この仕事に就いた理由、きっかけは何ですか?
私の家は代々鉄筋工事を生業(なりわい)としてましたので、小さいころから鉄筋の加工場が私の遊び場でした。鉄筋を支えるコンクリートブロックスペーサーという小さな四角いコンクリートの塊があるのですが、それでお城を作ったりして遊んでいました。
そういう家だったので親戚も鉄筋工事を仕事としている人が多く、気づいたら私も鉄筋の上にあがっていた、というのがこの仕事に入ったきっかけです。
なので、お盆で親戚が集まってもどこの現場がいそがしいとか、だいたい仕事である鉄筋工事の話になってしまいますね(笑)
仕事で大切にしていること、誇れることを教えてください。
建物が竣工して使われ始めると、鉄筋が見えるということは絶対にありません。だけど、竣工後何年後かに自分が携わった建物の前を通ると、仕事していたころのことが頭に浮かんできて、大変だったことや楽しかったことを思い出します。それは非常に感慨深いものであり、誇れることでもあります。
仕事で大切にしているのは、人とのつながりをとても大事にしているということ。今の建物は一つの業種だけでは建てることができないので、業界としても縦のつながりよりも横のつながりの方が重要な場面が多くなります。人とのつながりを大切にすることで、助け合いが生まれ、ゆくゆくは自分の仕事がしやすくなるのです。
私は人とのつながりの大切さを教えてくれるこの仕事が好きですし、お父さんに鉄筋屋さんでいてくれてありがとうと伝えたい。
鉄筋工事 / 鈴木 正典さん
鉄筋工事 / 鈴木 正典さん
次世代に継いでいきたい技・そのための道具はありますか?
次世代に伝えたいのは、あきらめないこと。最近感じるのですが結構すぐにあきらめる人が多いように思います。あきらめるのは簡単です。でもどんな仕事もそうだと思いますが、私たちの仕事は必ずやらなければ終わりません。だけど、逆に言うと終わらない仕事はありません。あきらめずにずっとがんばれば仕事は終わります。すぐにできないというのではなく、どうやったらできるかということを常に考えるということを次世代に伝えていきたいと思っています。
私たちが扱うものの一つに、ハッカーと呼ばれる鉄筋の結束をするための道具があります。結束線をハッカーに引っ掛け、鉄筋同士をその結束線を用いて固定するのです。この道具は手の器用さにもよりますが、いかに早く回せるかが技術になります。とはいえ、最近は機械で結束できる道具もありますが、やっぱりハッカーを使っていかに早く強固に、きれいに結束できるかが職人の腕といえます。
かといってハッカーがいくらうまくても、鉄筋工事を施工する仕事をする上では、図面を見て正確に鉄筋を配筋することができないとダメなんです。
一人前と呼べる目安は、図面を見て理解し、正確に配筋できるようになるということですかね。そうなるには早い人でも3年くらいはかかります。最近は外国人技能実習の制度を活用して、職人さんでも外国人の人が多くなってきています。やる気のある人は3年たてば一人前になることができますが、制度として3年たつと国に帰らなければならない、というのが指導し職人を育てる立場の私としては歯がゆいものがあります。
実際に仕事をして記憶に残っている印象的なエピソードがあれば教えてください。
2011年の東日本大震災の時のことですかね。震災当時、私は海に近い現場にいて、もう少しで鉄筋工事が終わり、コンクリートを打設するというところまで進んでいる段階でした。そこで地震があり、直後に津波がその現場にも押し寄せ、被災してしまいました。その結果、私たちが組んだ鉄筋は津波を被り泥まみれになってしまったんです。震災後、その現場は稼働することになったのですが、被災前に組んだ鉄筋はすべて解体してもう一度組立てるということになってしまいました。仕方がないこととはいえ、やはり心を込めて組んだ作品を自らの手で解体するというのはとてもつらかったですね。
職人さんに伝えていることは?
コミュニケーションをとるように伝えています。一日の3分の1は仕事をしているのですから、長く一緒にいる職人さんたちとはコミュニケーションをとって楽しく話した方が良いということを伝えています。
趣味はなんですか?
仕事?そんなこといったら何してるんだ?と言われそうですが、本当に仕事が趣味みたいなものなんです。休みの日も会社にいって図面見たりしているほどなので(笑)、それだけ、やりがいがある仕事だということですね。
建築業界を目指す、若者へメッセージ!
昔は建設業は全般的に3K(きつい汚い危険)といわれていましたが、中でも鉄筋工事は特にその色が濃い職種だとされてきました。ですが、今は機械もずいぶん進歩していて、一般にイメージされているよりきつい仕事ではなくなったかと思います。
やることは昔から変わってませんが、周りの環境が変わったので大分よくなりました。休憩所やトイレなども最近の作業所はよく整備されてますし、本当に仕事環境は改善されてきました。道具も年々改良されて持ち運びも楽になりました。力仕事であることには変わりありませんが、だからこそ男の仕事でありカッコいい職種だと思っています。
鉄筋工事 / 鈴木 正典さん

interview04

鳶・土工工事 / 畠山 克也さん
建築の仕事に関わりたくて、カッコよかった鳶職に。
鳶・土工工事 / 畠山 克也さん
仕事の内容について教えてください。
鳶土工工事の仕事をしています。現場が始まる仮囲いからスタートし、最後の仕上工事にいたるまで現場の安全を守りながら、各職種が作業しやすいように足場などの仮設物を整備するなど、建物を建てる最初から最後まで携わる仕事です。また、仮設工事以外にも掘削工事やコンクリート打設、鉄骨建方工事も行います。
鳶土工の職長として、自社の作業員に関わらず現場で作業する全ての人が安全に作業することができるように段取りします。現在の現場に配属されて間もなく10ヶ月で、専門工事会社の職長たちで組織されるリーダー会の会長にも任命されました。この現場に携わるすべての職人さんの代表として、責任感を持って職場をよりよくするために頑張っています。
この仕事に就いた理由、きっかけは何ですか?
昔からこの仕事に興味がありました。小さいころは家を建てるような大工さんになりたいという夢もあったので、いつか建築に携わりたいという想いがずっとあったんです。私が高校を卒業するタイミングで既に社会人となっていた兄弟が鳶職の仕事をしており、その紹介で現在の仕事に就くことになりました。大工さんへの憧れはあったものの、鳶職がとても目立っていてカッコいいと思ったのもこの仕事を選んだ理由です。
仕事で大切にしていること、誇れることを教えてください。
大切にしているのは、とにかく仕事は楽しくやるということ。一日の大半を仕事して生活しているわけですから、仕事を楽しめなければ人生を楽しく生きていないことになると思ってます。また、自分一人で楽しむのではなく、一緒に仕事をしているみんなで楽しく仕事ができるよう心がけています。
誇れることは、現場のリーダー会の会長をおおせつかっていることです。現場の全作業員の代表になれたということを誇らしく思います。ただし、その立場にあぐらをかいていては意味がありません。みんなを引っ張っていかなければならないので、とにかく人の話を聞き、みんなに話を聞いてもらえるようにすることを常に心がけています。
鳶・土工工事 / 畠山 克也さん
鳶・土工工事 / 畠山 克也さん
次世代に継いでいきたい技・そのための道具はありますか?
私も先輩方から引き継いできた仕事があります。先輩の背中を見てカッコいいと思いながら必死でその背中についていきました。私も後輩たちにカッコいいと思われるように、自分の仕事に誇りを持ってつなげていきたいと思います。
今は技術がものすごいスピードで進歩し、いろんな道具が機械化していく流れの中にあります。しかしどうしても機械やロボットにはできず、人の手にしかできない技術が必ずあります。その技術を大切にしながら、次代へつないでいけたらいいなと思います。
道具はとくには思い浮かびませんが、様々な人と関わるこの仕事の最大の道具は、やはりコミュニケーション能力だと思っています。仕事はコミュニケーションが取れれば80%くらいはうまくいくと感じています。コミュニケーション能力の低下がいろんなところで言われていますが、若い世代にはコミュニケーションがいかに大切で有効なものであるかを実感させ、覚えさせていきたいと考えています。
実際に仕事をして記憶に残っている印象的なエピソードがあれば教えてください。
良い思い出ではありませんが、私は過去に人が目の前で墜落してしまった事故をこの目で見ています。命に係わる重大な事故です。そのような事故は被災した本人のみならず、家族・仲間・友人・会社などみんなに悲しい思いをさせます。本当に悲しい出来事です。私はみんなの安全を守る鳶職として、二度とそのような悲しい出来事を起こさないと誓いました。それを実現するには、やはりコミュニケーションが大事だと思っています。コミュニケーションを取りながら何が最良であるかを議論し、よりよいものを作り上げていきたいです。
趣味はなんですか?
ゴルフとバイク。ゴルフは最近調子がよく、ほんとにおもしろくなってきてますね。ゴルフをする仲間も多いので仲良くなれるし。バイクは昨年大型自動二輪の免許を取得したんですが、会社の仲間とのツーリングはとても楽しいし気持ちが良いです。
建築業界を目指す、若者へメッセージ!
数多くの業種の人々と出会い、しのぎを削りながらモノを作っていくのが建設業。そして、いい意味でも悪い意味でも目立つのが、鳶職という仕事。建物ができる最初から最後まで立ち会える醍醐味があります。辛いこと、やめたいと思うこともたくさんありましたけど、その度にみんなが助けてくれます。ある現場の監督に「足場は母心で組みなさい」と教わりました。その気持ちを忘れずに、助けてくれた仲間に恩返しをしたいと思っています。
鳶・土工工事 / 畠山 克也さん

interview03

外構工事 / 後藤 泰貴さん
大震災をきっかけに故郷宮城に帰り、道路・外構工事に再就職。
外構工事 / 後藤 泰貴さん
仕事の内容について教えてください。
建物の回りの道路や駐車場の舗装工事、土工事、床石・タイル貼りを行います。現場によってはフェンスや自転車置き場、また側溝等の構造物をつくるのも外構工事です。
建設の流れの中で、建物の外装が完了し、足場が取れて、そこから外構工事は始まります。
この仕事に就いた理由、きっかけは何ですか?
ここは2度目の会社で、以前は不動産会社で設計の仕事をしていました。きっかけは、東日本大震災。元々私は宮城出身ですが、当時、新潟に就職していたんです。震災を機に、どうしても宮城に帰って仕事をしたいと思いました。
義理の母が、この道路・外構工事の会社にいて、以前から業務内容を知っていたので、大震災で壊れて滞っていた「命の道」の復旧に携わりたいと、仙台で再就職しました。
外構工事 / 後藤 泰貴さん
外構工事 / 後藤 泰貴さん
今までの仕事で印象に残っていることは?
私は営業部に所属しているのですが、半年間、現場に管理として入ったことがありました。その時、現場は常に動いていると、改めて感じました。30人くらいがチームになって仕事を進めていたのですが、一人一人の技術と、それをスムーズに動かす段取りが、いかに大切かを知りました。
仕事で大切にしているのは何ですか?
お客様、他業種の人たちと信頼関係を築くために、謙虚でありたい、と思っています。
何より、いい仕事、いいものを提供していきたいですね。
趣味は何ですか?
スノボーとDIY。食器棚をつくったり、箪笥のリフォームもしました。
建築業界を目指す、若者へメッセージ!
スケールの大きい仕事は、やりがいも大きいです!宮城県出身の人間として、東日本大震災をきっかけに地元へ戻って、地元のために貢献できる仕事をしたいと思いました。同じような気持ちの人がいたら、ぜひ震災からの復興・復旧のために一緒に働いてみませんか。地元のために働く、心の充足感も大きいです。
外構工事 / 後藤 泰貴さん

interview02

型枠大工工事 / 木村 忠さん
建物の完成時には95%見えない仕事。それだけに、誇りを持って。
型枠工事 / 木村 忠さん
仕事の内容について教えてください。
建物の基礎にあたる部分で、コンクリートを流し込むための型枠を作ります。具体的には、鳶さんが地面を掘り鉄骨を組んだ(掘削・鉄骨挿入)の後に、コンクリートの出来上がりを想定しながら、木製の枠を鉄製サポートやチェーンといった資材でがっちりと固定していきます。
ここにコンクリートが注入され、約3日間乾燥させて、コンクリートが立ち上がったところで型枠を取り外します。
この仕事に就いたきっかけは何ですか?
子どもの頃から建築業に憧れていたんです。カッコいいなあ、と。それで高校を卒業してこの仕事を選びました。
1年間、職業訓練学校で学ぶとともに、型枠作業の資格も取り、2年目から現場の仕事について33年になります。
型枠大工工事 / 木村 忠さん
型枠大工工事 / 木村 忠さん
今までの仕事で印象に残っていることは?
私たち型枠大工の仕事は、完成した建造物からは95%見えない仕事なんです(笑)だからこそ、誇りを持って仕事しているのですが。
まれにクリア仕上げといいますが、コンクリート打ちっ放しの建物の場合だけ自分の仕事の出来を見ることができます。
印象が残っているのはというと、やはりスケールの大きな仕事。札幌ドーム、東京ミッドタウン、ディズニーランドのホテルなどがそうですね。
仕事で大切にしていることは何ですか?
〈工程を守って手渡す〉。始めの方の仕事なので、技を駆使してきっちり仕事をして、次の業種の方にしっかり手渡すことです。
趣味は何ですか?
30才まではウィンタースポーツでした。仕事で北海道にも行っていたので存分に楽しんだりしました。3年前からはゴルフを始め、今、はまってます(笑)
建築業界を目指す、若者へメッセージ!
私は今、職長という役職に就いていますが、国家資格である型枠施工技能士の他に、クレーン運転士資格や安全衛生の管理者免許など、10数種類の資格を持っています。一現場一現場で技術を身につけながら、同時に資格も取っていくことができるのも、この仕事の魅力です。
きつい仕事に思われがちですが、休日などの福利厚生も向上していて、働く環境もいいですよ。
型枠大工工事 / 木村 忠さん

interview01

鳶・土工工事 / 熱海 康太郎さん
てっぺんからの景色を一番最初に見れるのが鳶。
その達成感は言葉にできない。
鳶・土工工事 / 熱海 康太郎さん
仕事の内容について教えてください。
私たち鳶・土工の仕事は、建物を建てるにあたって更地を仮囲いすることからスタートします。基礎部分の土を掘り、コンクリートを流し込み、そして足場を組みながら鉄骨組み、クレーンを使っての外壁取り付けなど、上の階へ上の階へと建物を築き上げていくわけです。
建物・外構が完成した後の清掃、仮囲い、撤去まで、現場の最初から最後までに携わる仕事です。
この仕事に就いた理由、きっかけは何ですか?
知り合いの紹介で鳶・土工の仕事を知ったのですが、初めに楽しそうだなと思いました。実は祖父が宮大工で、代々建設業に向いているのかもしれません(笑)この仕事に入ったのは17才でしたね。
鳶・土工工事 / 熱海 康太郎さん
鳶・土工工事 / 熱海 康太郎さん
今までの仕事で印象に残っていることは?
現場に入って最初の頃はもちろんわからないことばかりでしたが、尋ねてみれば皆さんやさしく教えてくれました。だから自分もそんな先輩たちを見習って、後輩を指導していきたいと思います。
現場では最初から最後まで携わるため、現場全体を引っ張っていくリーダーシップも求められますが、以前、人間関係で悩んでいたときに、「相手も人だから」と上司に言われたことがありました。その言葉で度胸が座り、人との関係も自然と築いていけるようになったと思います。人が好きで、今では新しい現場に向かう時、どんな人たちと一緒に働けるのかなと楽しみになっているくらいです。
趣味は何ですか?
ゴルフです。100を切るのを目標に頑張っているんですが、これがなかなか……(笑)
建築業界を目指す、若者へメッセージ!
骨組みを組むと、私たちはその現場で一番最初に建物のてっぺんに立つことができるんです。その爽快感、そして、最初から最後まで現場の中心にいて、さまざまなことを乗り越えて完成した建物を見たときの達成感は、ちょっと言葉ではあらわせないほどのものがあります。それがこの仕事の醍醐味ですね。
鳶・土工工事 / 熱海 康太郎さん